TOKYO 2021とは
藤元明「2021 #New National Studium Japan」(2016/ 東京) 撮影:宮川貴光
「TOKYO 2021」のはじまりは「2021」です。「2021」とは、2016年、新国立競技場建設予定地の前に木製の2、0、2、1(高さ3.6m、幅10m)のオブジェを設置し、ひとつの景色として収まることで始まった現在進行中のアートプロジェクトです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け演出される価値観に対し、呼応することで成立する、我々への「問い」です。そしてこの「2021」のコンセプトを共有した、実際に都市開発を手掛ける戸田建設の能動的なアクションとして、本企画「TOKYO 2021」が生まれました。
現在、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博同様、国家的大祭を機に、都市を書き換えるほどの、数え切れない開発が進行しています。開発とは、文化や地域性、未来像など、これまでの価値観と、これからの価値観に向き合わざるを得ません。私は、そのような時にこそアートは機能すると考えます。ここでいうアートとは、美術館やギャラリー、アートフェアや芸術祭とは違う文脈の「開発とアート」という社会性を有した枠組みです。そして私は、共同企画者である建築家・永山祐子と共に、時代の読み解きや、社会への「問い」を表現できる美術家や建築家が必要だと考えました。
本企画の特徴として、戸田建設本社ビル、建替え期間中の解体前夜という、自由度の高さと、東京都心という場所性から「アート特区」とも言えます。そこで、この条件を活かすため、建築の側面から、東京という都市の変遷を踏まえながら本質的な課題を見つけ出そうと試みる建築家・中山英之、藤村龍至、現代美術の側面からは、日本の近代美術史解釈の書換えを試みながら未来を志向するキュレーター・黒瀬陽平、といった方々に協業をお願いしました。更に様々なプレーヤーが呼応し、再解釈された新しい過去から「TOKYO 2021」の骨格を作り上げていくことになります。
時代の引用としての作品「2021」は、常にそれだけでは完結しません。「2021」は、鑑賞者に、作品への解釈を超えた能動性を求めているからです。これまで「問い」として成立する背景を求め、様々な場所で設置を繰り返し、様々な協力者と共にアクションを拡張してきました。「TOKYO 2021」でもまた、それぞれの新しいヴィジョンのきっかけとなる「問い」を準備しています。鑑賞者には、それらを自分なりに解釈し直して「2021」に参加してほしいのです。時代は作家が作るのではなく、鑑賞者自体が時代そのものになると考えるからです。
2021年は、戸田建設にとって創業140周年を迎える年であり、かつ長らく京橋の地で社業を営んできた社屋(TODAビル)が、2024年に完成する(仮称)新TODAビルにその役割を繋いでゆく節目の年でもあります。
新しいビルには、アートをはじめとするクリエイティビティを育み、発信する場が誕生します。訪れるオフィスワーカーや地域の人、街区を訪れた人たちには、気軽に芸術文化に触れられ、発見や変化によって新しい繋がりが生まれ、彩りある豊かな未来へと展開していく“きっかけ”を提供したい、そして京橋の街がさらに発展していく役割を担えればと願っております。
2019年8月、TODAビルが解体され一旦姿を消すその前に、再び京橋に新たな芸術文化施設と共に戻ってくることを宣言し、街から期待される再生を果たすためにも、アートイベントを開催することとなりました。
この「TOKYO 2021」は、戸田建設が若手アーティストや建築家と組んで手掛ける初めてのアートイベントであり、我々が、完成までのすべてのプロセスから学び、未来に対して何ができるのかを考え、昇華させていくための必要不可欠な通過点と位置付けています。アートイベントのテーマを通して、自らのルーツである建築・土木を見つめ直す機会を得られたことも大きく、多くの方にご覧いただけることを願っております。
タイトル | TOKYO 2021 |
会場 | TODA BUILDING 1F(東京都中央区京橋1-7-1) |
会期 | 2019年8月3日(土)〜10月20日(日) 11:00-20:00 火曜定休 建築展(8月3日〜8月24日 公開講評討論会:8月24日(土)午後) 美術展(9月14日〜10月20日) ※建築展・公開講評討論会後、8月25日から8月31日まで課題の成果のみウィンドウエリアでご覧いただけます。 ※9月1日〜9月13日までは美術展の展示替えのため休場期間となります。 |
入場 | ウェブサイトより事前登録。 ※展覧会は2会場で開催されており、うち1つは事前登録なくご覧頂けます。 |
総合ディレクション | 藤元明 |
企画アドバイザー | 永山祐子 |
主催 | 戸田建設株式会社 |
運営 | TOKYO 2021 実行委員会 |
藤元明|アーティスト
1975年東京生まれ。東京藝術大学美術学部大学院デザイン専攻修了。FABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学先端芸術表現科非常勤助手を経てアーティストとして活動。都市における時間的/空間的余白を活用するプロジェクト「ソノ アイダ」を主催。人間では制御出来ない社会現象をモチーフとして、様々な表現手法で作品展示やアートプロジェクトを展開。主なプロジェクトに「NEW RECYCLE®」、広島-New Yorkで核兵器をテーマに展開する「Zero Project」など。2016年より開始した「2021」プロジェクトは現在も進化中。
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永山祐子|建築家
1975年東京生まれ。1998年昭和女子大学生活美学科卒業。1998-2002年 青木淳建築計画事務所勤務。2002年永山祐子建築設計設立。ロレアル賞奨励賞、JCDデザイン賞奨励賞「LOUIS VUITTON 京都大丸店」、AR Awards(UK)優秀賞「丘のあるいえ」、ARCHITECTURAL RECORD Award, Design Vanguard、JIA新人賞「豊島横尾館」、山梨県建築文化賞、JCD Design Award銀賞、東京建築賞優秀賞「女神の森セントラルガーデン」など。現在、ドバイ国際博覧会日本館、新宿歌舞伎町の高層ビルなどの計画が進行中。
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中山英之|建築家
1972年福岡県生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京藝術大学准教授。主な作品に「2004」、「O邸」、「石の島の石」、「弦と弧」、「mitosaya薬草園蒸留所」、「Printmaking Studio/ FMC」主な著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版)『, and then: 5 films of 5 architectures/建築のそれからにまつわる5本の映画』(TOTO出版)。
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藤村龍至|建築家
建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。2018年より日本建築学会誌『建築雑誌』編集委員長。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がける他、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメント、ニュータウン活性化、中心市街地再開発のデザインコーディネーターとして公共プロジェクトに数多く携わる。
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![]() photo: Kenshu Shintsubo |
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黒瀬陽平|美術家 / 美術批評家 / カオス*ラウンジ代表
1983年生まれ。美術家、美術批評家。ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に『破滅*ラウンジ』(2010年)、『カオス*イグザイル』(F/T11主催作品、2011年)、『キャラクラッシュ!』(2014年)、『カオス*ラウンジ新芸術祭2017「市街劇 百五〇年の孤独」』(2017年)など。著書に『情報社会の情念』(NHK出版、2013年)。
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西澤徹夫|建築家
1974年京都府生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。青木淳建築計画事務所勤務を経て、2007年に西澤徹夫建築事務所を設立。主な作品に、「建築がうまれるとき ペーター・メルクリと青木淳」展、「今和次郎 採集講義」展、「パウル・クレー|おわらないアトリエ」展、「Re: play 1972/2015―「映像表現 ’72」展、再演」展、「窓学10周年記念 窓学展/窓学国際会議」展の会場構成、「東京国立近代美術館所蔵品ギャラリーリニューアル」、「西宮の場合」、「907号室の場合」など。現在、京都市京セラ美術館、八戸市新美術館が進行中。
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